膀胱がん
膀胱がんは、膀胱の粘膜から発生する悪性腫瘍で、男性に多く、女性よりも約3倍発症率が高いのが特徴です。年齢とともに発症率は高くなり、特に70歳以上の方に多く見られます。
症状
膀胱がんの主な症状は以下の通りです。
血尿
尿の色が赤や茶色になる、または顕微鏡で確認できる微量な血尿
頻尿
トイレが近くなる
排尿時の痛み
排尿時に痛みや違和感を感じる
尿意切迫感
常にトイレに行きたいような強い尿意を感じる
残尿感
排尿後も膀胱に尿が残っているような感じ
排尿困難
尿が出にくい
これらの症状は、膀胱がん以外にも膀胱炎や前立腺肥大症などでも見られるため、必ずしも膀胱がんとは限りません。しかし、これらの症状がある場合は、早めに泌尿器科を受診し、適切な診断を受けることが重要です。
原因
膀胱がんの原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因がリスクを高める可能性があると考えられています。
喫煙
喫煙は膀胱がん発症リスクの最も重要な原因の一つです。
職業性暴露
染料や化学物質など、特定の化学物質に暴露される仕事に従事している方は、膀胱がんのリスクが高くなります。
膀胱炎の慢性化
膀胱炎が慢性化している方は、膀胱がんのリスクが高くなります。
遺伝的要因
家族に膀胱がん患者がいる方は、膀胱がんのリスクが高くなります。
診断
血尿や排尿時痛があったり、慢性的に尿混濁が続く、あるいは膀胱炎を繰り返す、などの症状がある場合は、積極的に超音波検査などで精査すべきでしょう。尿細胞診で正常でない結果(class3以上)や超音波検査で腫瘍性を疑う所見を認めた場合は、膀胱鏡検査を行う必要があります。膀胱腫瘍と診断されたら、腹部CTなどで上部尿路(腎臓や尿管)に腫瘍が無いかの確認を行います。膀胱原発の腫瘍の場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行い、腫瘍深達度診断を兼ねた手術治療を行います。
膀胱鏡検査とは、尿道から内視鏡を挿入して膀胱内を観察する方法ですが、患者さんにとっては大変苦痛を伴う検査となります。一昔前までは、硬性鏡(硬い金属の棒状の内視鏡)しかありませんでしたので、非常に苦痛を伴う検査でした。しかし、現在は軟性膀胱鏡という、柔らかいシリコン性の細い内視鏡が主流となり、随分苦痛は軽減されております。当院では、アンブ社製のシングルユース軟性膀胱鏡(aScope 4 シスト)を採用しておりますので、衛生面でも安心で検査の苦痛もほとんどありません。
治療法
膀胱がんの治療法は、がんの進行度や患者さんの年齢、体力などを考慮して選択されます。
手術療法
早期がん(粘膜内~筋層1/2まで)の場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行います。
早期がんでも、約半数が再発すると言われています。
膀胱内注入療法
TURBT術直後や上皮内がん(Cis)の場合に、再発予防目的に抗がん剤や免疫療法剤(BCG)を膀胱内に注入する方法です。
放射線療法
高エネルギーの放射線を照射してがん細胞を殺傷する方法です。抗がん剤治療と組み合わせることで効果が高まることがあります。
薬物療法
進行がんの場合に、抗がん剤などを用いて腫瘍を小さくしたり、進行を遅らせる目的で行います。転移が無く、腫瘍が小さくなれば、根治的に膀胱全摘術(+尿路変更術)を行う場合があります。
膀胱がんの予防
膀胱がんの予防には、以下のことが有効です。
喫煙をしない
喫煙は膀胱がん発症リスクの最も重要な原因の一つであるため、禁煙することが重要です。
職業性暴露を避ける
特定の化学物質に暴露される仕事に従事している方は、適切な保護措置を講じる必要があります。
膀胱炎を早期に治療する
膀胱炎は慢性化すると膀胱がんのリスクを高めるため、早期に治療することが重要です。
定期的に検診を受ける
50歳以上の方や、膀胱がんのリスクが高い方は、定期的に検診を受けることをお勧めします。