尿失禁
尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態を指します。誰にでも起こり得ることですが、特に女性や高齢者に多く見られます。恥ずかしさや不安から、周囲に相談せずに一人で悩んでいる方も少なくありません。
しかし、尿失禁は決して恥ずべきことではありません。適切な治療を受けることで改善が見込める症状です。
尿失禁のタイプ
切迫性尿失禁
オシッコに行きたいと思ったらトイレまで我慢できずに漏れる・漏れそうになる。
切迫性尿失禁とは、突然強い尿意が起こり、トイレまで間に合わず尿が漏れてしまうことです。過活動膀胱のかたの約半数に切迫性尿失禁を伴います。40歳以上では8人に1人が過活動膀胱と報告されていますが、実際に医療機関を受診する方は約20%と低く「年のせいだから治療方法はない、恥ずかしいなどの理由であきらめている人が多い」と考えられています。問診や尿検査、超音波検査で診断でき、薬で症状の改善が期待できますので、お困りであれば、ぜひ受診をしてください。
腹圧性尿失禁
お腹に力がかかると漏れる。
腹圧性尿失禁とは、起き上がり動作、くしゃみや咳、大笑いなど腹圧がかかる状態で尿が漏れてしまうことです。出産や加齢、肥満によって骨盤底筋群(骨盤内の臓器が落ちないように支えている筋肉)が傷ついたり、緩むことによっておこります。軽度であれば骨盤底筋群体操(失禁体操)での軽減が望めますが、体操ですので効果を実感出来るまでに数ヶ月を要します。中等度・重度の場合は内服治療、膀胱下垂が伴う場合は外科手術も選択肢となります。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
尿が出にくく、多量の尿が膀胱に溜まった状態が長引くと、尿が漏れ出てくる。
溢流性尿失禁は、尿が出し切れず残尿が多くなり、風呂のお湯がこぼれるが如くオシッコが漏れる状態のことです。尿の通り道が狭くなる「前立腺癌、前立腺肥大症、尿道狭窄」、膀胱が収縮する機能が低下する「糖尿病性神経障害、脊髄損傷、直腸癌や子宮癌などの術後に生じる神経障害」でおこります。
機能性尿失禁
尿路の異常以外の原因によるもの。精神神経疾患などが原因となって失禁してしまう。
機能性尿失禁は、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる尿失禁です。歩行障害のためにトイレまで間に合わない、あるいは認知症のために尿意やトイレをうまく認識出来ずに排尿出来ない等が考えられます。この場合は介護や生活環境の見直し、家人だけで抱え込まずに公的サービスの導入等を含めて対応が必要となってきます。
尿失禁の原因
尿失禁は、様々な原因によって起こります。主な原因は以下の通りです。
骨盤底筋の弱化
妊娠・出産、加齢、肥満などにより、膀胱や尿道を支える骨盤底筋が弱くなり、尿漏れが起こりやすくなります。
過活動膀胱
膀胱が過敏になり、尿が溜まっていないのに強い尿意を感じてしまい、トイレに間に合わず尿漏れしてしまうことがあります。
尿路感染症
膀胱や尿道に細菌が感染し、膀胱が過敏になったり、尿道括約筋がうまく働かなくなったりして、尿漏れが起こることがあります。
神経因性膀胱
脳や脊髄の病気によって、膀胱の機能が障害され、尿失禁が起こることがあります。
前立腺肥大症
男性に多く見られる病気で、前立腺が肥大し尿道が圧迫されることによって、残尿が増え、尿漏れが起こることがあります。
便秘
便秘がひどい場合、直腸が膀胱を圧迫し、残尿が増え、尿漏れが起こることがあります。
薬の副作用
一部の薬の副作用として、尿失禁が起こることがあります。
他にも、尿失禁は以下の病気の症状の一つとして現れることもあります。
- 脳卒中
- 認知症
- 糖尿病
- 骨盤臓器脱
尿失禁の処置や治療法
尿失禁の治療法は、原因によって異なります。
骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋を鍛えることで、尿漏れを改善することができます。
薬物療法
過活動膀胱や尿路感染症など、尿失禁の原因となる病気に対して薬を服用することで、尿失禁を改善することができます。
手術療法
骨盤底筋の力が著しく低下している場合や、薬物療法で効果が得られなかった場合、手術で尿漏れを改善することができます。
生活習慣の改善
肥満や便秘を解消したり、カフェインやアルコールの摂取を控えたりすることで、尿失禁を改善することができます。
当院では、問診、検尿、残尿検査、超音波検査などを行い、失禁のタイプを判定します。タイプに応じた薬物療法を中心に行っておりますが、原因の治療で改善が見込まれる場合や「骨盤臓器脱」「難治性過活動膀胱」など症状が重い方は手術加療もお勧めしています。